スバック(Subak)とは、主にバリ島の農業において、伝統的な灌漑システムにより水を公平に分配するための水利組織であり、少なくとも900年以上の歴史を持つとされている。スバックは水利組織であるため、地域ごとにいくつかのスバックが存在しており、現在では1000以上のスバックが存在するとされている。
スバックでは井堰にて河川水を堰き止め、水門の開閉によりそれぞれの農家の田んぼへ流水を調整することで、限られた資源である水を、それぞれの農家が平等に受け取れるようにしている。
また、スバックの運営は水の神を祀る水利寺院を中心に行われており、取水や田植え、収穫といった節目ごとに儀礼が執り行われる。このスバックと密接な関係を持つのが、バリ・ヒンドゥーにおける「トリ・ヒタ・カラナ」という思想である。「トリ」は数字の3、「ヒタ」は幸福、「カラナ」は原因を意味し、「幸せのための3要素」という意味を持つ言葉である。人間・自然・神の3要素の調和を重視する考え方であり、スバックはこの思想を具体的な形として体現している。
このような文化的・環境的価値が評価され、スバックは2012年にユネスコ世界文化遺産に登録された。現在においても多くの地域で実際の農業に利用されており、バリ島の農業と景観を支える重要な役割を果たしている。